次世代ゲーム機 NGP(No Gaming Pirate) ソニーがPSP2で考える違法コピー対策

長らくPSP2と言われてきたPlayStation Portableの後継機、次世代携帯型エンタテインメントシステム(コードネーム:NGP[Next Generation Portable])が発表されました。

同時にPlayStation Phoneと言われていたPSPケータイもPlayStation Suite(プレイステーション スイート)という、ハードウェアではなくAndroid2.3以上の端末で動作するサービスという位置づけで発表されました。

ニンテンドー3DS発売およそ1ヶ月前の2011年1月27日、前回はPlayStation3を発表した”PlayStation Meeting”が6年ぶりに行われ、NGPとPlayStation Suiteという2つのPlayStationの存在が明らかになりました。PlayStationという文字がディスプレイ下にありながらPSP2とは呼ばずNext Generation Portableと呼んだPSP後継機の発表から見えてきたのは、PSP go発表の時と同じ構図となる違法コピー対策による既存ユーザー切り捨てかもしれません。

NGP_PSP2


UMD切り捨て〜違法コピーの元凶をUMDに見いだしたソニー

ソニーがPlayStationでゲーム機市場に参入し市場を席巻し、モデルチェンジのたびに過去のソフト資産を活かすべく旧型用ゲームが新型機でもプレイできる「後方互換性」を武器に成長を続けてきました。

これは任天堂も同じで、DSではゲームボーイアドバンス、Wiiではゲームキューブのソフトをプレイすることが可能となっていました。モデルチェンジ後の買い替え需要の掘り起こしに「後方互換性」は非常に重要であることは、来月発売される3DSでDSのゲームがプレイできることを任天堂がうたい、NGPでPSPのゲームがプレイできることをソニーうたっていることからも明らかです。

3DSはDSのカードリッジが使えます。DSから3DSへ買い替えをしてもソフトはそのまま3DSでプレイすることが可能です。DSiで購入したDSiウェアを3DSへ引っ越しすることができる計画もあります。

しかし、NGPはUMDが使えません。PSPのゲームが動作はするようですがそれはPSP用に販売されているデジタルデータとの互換性の話であり、ユーザーが持っているUMD資産は新型機では利用できません。後方互換性はユーザーサイドでは意味を持たない、ソニーが持っているコンテンツ資産を活かせるという意味でしかありません。

これは、『モンスターハンターポータブル 3rd』のUMDを持っていてNGPでも『モンスターハンターポータブル 3rd』をプレイしたければ、PSN版『モンスターハンターポータブル 3rd』を新たに買い直す必要があることを意味します。

ユーザーの視点から見ると、PSP go発売時に手持ちのUMD資産が活かせなかった構図と全く同じです。つまり、NPGでPSPを初めて購入、あるいはPSPに買い足す形でNGPを購入するユーザー以外の場合、ゲームは新たにPSNから購入し直さなければならないことを意味しています。

本来なら既存ユーザーの買い替え需要を狙い後方互換性を確保すべきところを、PSP goで一度失敗したデジタルダウンロードオンリーのソフトウェア販売へ再び一本化を図ることを意味しています。PSP goの時でも噂だけあって実現しなかった購入済UMDのデジタル化サービスは当然今後も導入されるとが考えにくいでしょう。つまりはUMDの切り捨て。既存ユーザーの買い替え需要を無にしてでも違法コピー対策のためのUMD廃止を優先したことになります。

ゲーム配布メディアとして長くソニーが採用してきたディスクの一般的な歴史を振り返ってみると、確かにCD、DVD、BDと容量を増加させる規格が生まれるたびにコピーガードは破られ、ディスクコピーが可能になってしまっていることは事実です。UMDの後継として容量を増やした後継規格を策定しても、現行UMDとの互換性を保ってしまうと近い将来コピーできるようになってしまうのは日の目を見るより明らかです。

ソニーがUMDの後継規格を開発しているという噂すら聞こえてこなかったのは、ある時期からソニーがUMDに見切りをつけていたせいかもしれません。コピーされてしまうUMDこそ違法コピーの元凶である、として。

残念ながら簡単にコピーされてしまったメディアであったが故に、後継規格が作られることもなくその歴史に幕を閉じることになってしまったUMD規格と一緒に、ユーザーが所有するUMDの価値だけでなく、中古流通経路に存在するUMDの価値までもが無に帰すことが決まったことになります。

PSP後継機はそのコードネームをNext Generation Portable(NGP)としていますが、おそらくパンドラバッテリー対策でバッテリーを内蔵型にしてしまったPSP go同様バッテリー交換不可であろう外観や、コピープロテクト機能を搭載するであろう専用カードリッジなど全てにおいて違法コピー対策を主眼に据えたようにしか見えません。

ユーザビリティへのプライオリティを無視し、違法コピー対策主眼のデバイスにユーザーを適合させようとする傍若無人な姿勢は、きっとNGP本来のコードネームの由来がNo Gaming Pirate:ゲーム違法コピー撲滅だからに違いありません。

やれるだけのことは全てやる。それだけソニーが本気だと言うことです。

次世代ゲーム機 NGP(No Gaming Pirate) ソニーがPSP2で考える違法コピー対策” に対して16件のコメントがあります。

  1. とり より:

    携帯機に光メディアというのも元々あまり相性が良いものでは無かったですしね
    スピンドルドライブの使用による重量増加とバッテリー消耗の増加や振動対策、使用面積の削減が困難など様々なデメリットもありますし
    1000からドライブを取り払うとその軽い事軽い事…

    それでもCD、MD、BDと光メディアの開発を主導してきたソニーがここに来てPSから光メディアを取り払って、完全なゼロスピンドルモデルを本格的に提供するというのはやはり面白いですね
    VAIO PやPSP goの様な機器もあるにはありますが、あくまでメインストリームの機器ではなくサブフレーム的な発想の下で試してきたものを「PSPの後継」という失敗の許されない存在に対して適用したというのは確かに相当な覚悟が見受けられます

    その上で「違法コピー対策」と「ユーザーの利便性」を天秤に掛けた結果
    「UMDを削除、DL版は互換維持、物理メディアは採用」という判断をSCEは下した様ですね
    ネットワークと違法コピー対策重視の姿勢を取ったという事なのでしょうが
    それは「ハードウェア」の観点から見たものでもあり、では「ソフトウェア」としての観点から見た場合はどうなるか?というとその答えが同時に発表されたPlayStationSuiteの発表やPSNのAndroid全体への開放であるという事なのでしょうね

    「NextGenerationPortable」(次世代のポータブルハード)にして「NoGamePirates」(海賊版を撲滅する)つもりでもあるNGPが出た結果、次世代のゲーム業界はユーザーもメーカーも被害を受ける事の無い健全な世界でどこでも遊べる空間になっていると切に願います

  2. ととと より:

    違法コピー対策をしないとSONYが困って、違法コピー対策をするとユーザーが困ってしまう……
    やっぱりどうしようもできないのでしょうかね。
    UMDを送付したらDL版をダウンロード出来るようになる、とかあればいいんですけどねぇ。

    ところで、ゲームボーイカラーではなくゲームボーイアドバンスではないでしょうか?

  3. まもすけ より:

    @とりさん

    PSS(PlayStation Suite)は、PlayStationの門戸を広げる役割と、NGP高いという批判の緩衝剤なのではないかと感じています。PSSが単なるサービスだとソニー・エリクソンは全く美味しくないので、ソニエリもそれなりに潤うマシンがXperia Playではないかと思います。
    どんなAndroidでも動作すると言いながら、実際にはXperia Playの操作体系がないと楽しくプレイできない、みたいな戦略?

    そのうち携帯型ブルートゥースコントローラーとかがソニーから出るんでしょうね。

    ただ、違法コピーはメーカー側ではなくごく一部のユーザー側が引き起こした問題なので、全ユーザーが犠牲を払うのは納得しかねますが仕方のないことだとは思います。

    @とととさん
    >UMDを送付したらDL版をダウンロード出来るようになる
    ホントですね。
    それをGoでやっていれば良かったんですが、今更やらないと思います。
    あと、GBA、GBAと考えながら書いたのにゲームボーイカラーになってました。すいません。直しましたorz

  4. ドカンくん より:

    UMD持ってるのにPSN版を新たに買い直さなくてはならないなんて
    馬鹿らしいの一言に尽きますね。
    こうなったのも全て割れ厨のせいですね。本当頭に来ます。
    ただSONYも馬鹿ですよね。メインハードがNGPに移行すれば
    PSPのUMDなんてその内中古だけになってどの道SONYに金は入ってこなくなるんだからそうなればコピーされようがそれを
    ネットで流されようが関係ないんだし互換性持たせりゃよかったのに。
    GBAソフトとの互換性が無い為にDSiの購入を思いとどまった人も
    少なくない筈。任天堂が2年前に犯した失敗を繰り返すつもりなんでしょうかね。

  5. まもすけ より:

    @ドカンくんさん

    DSiはDSLiteと併売だったし、モデルチェンジだと思えばDS互換ありなのでまだいいと思います。

    PSPはきっとNGPと併売するとは思いますが、UMDと互換性無いのは事実ですからね。Goは失敗だったと認めてるなら何らかの手を考えるものだと思っていただけに無策すぎて驚きです。

  6. 天然パーマ より:

    コピーゲームが起動できれば売れる、出来なければ売れない。
    ただそれだけのことなのにチョニーは本当バカですよね。
    僕もまもすけさんに賛同します。ユーザーの事を思えばUMD互換を残して
    そこから割られなければならないのに…
    任天堂とは違ってユーザー軽視の姿勢がありありと見えて嫌な気分になります。

    まぁ皆PSPなんてISO起動で楽しんでるし、UMDなんてゴミ規格誰が持ってんだって思ったのも事実ですが…笑

  7. stream より:

    初音ミクのドリーミーシアターであったシステム使って、PS3でUMDを認証してDL版を無料または手数料をいくらかとって落とさせるとかできないですかね…

    NGPでたらそっちしか持ち歩かなくなるのでUMDが無駄になるのが悲しいですね

  8. regime より:

    もとは下位互換はハードの初期の売上を押し上げるために積むもので、順調にいくと2年もすれば殆どの人にとって御役御免になるものです。今やPS2のゲームをする為に初期型PS3を買う人や、GBA互換の為にDSLiteを買う人は全くいないとは言いませんがそう巡り合えないでしょう。
    そもそも下位互換は購入意欲を左右する重要な要素ですが、決定的な要素ではありません。多くのユーザーはDSにタッチスクリーンを用いた斬新なゲームを、PS3にこれまでとは比較にならない高画質のゲームを、Wiiにリモコンを用いた体感型ゲームを求めました。最終的にユーザーはNGPでしかプレイできないゲームを求める筈で、それを供給できるポテンシャルをNGPは持っています。ただの機能削減モデルとなってしまったPSPgoと異なりますし、PSPとNGPの2台持ちなんて薄型PS2と薄型PS3両方置くよりずっと楽です。
    ゲーム機の歴史から考えてみればむしろ下位互換の無いものの方が多いわけで、将来的に魅力が無くなることが確実な機能の為のUMDドライブなど切り捨てて本体価格を下げた方がよいと考えたのではないでしょうか。DL版が遊べるだけましな方です。ついでに以前から目の敵にしてきた中古ゲームを抹殺できれば違法コピー含め一石二鳥です。

    ゲーム機メーカーやソフトウェアデベロッパーの姿勢は以前から少しも変わりません。
    「中古ゲームソフトなんか必要ない。新品が売れないから。」
    「ゲームがしたいなら金持って来い。金が無いならゲームをするな。」
    これに文句のある人はNGPも3DSも買わない方がよいでしょう。

  9. 天然パーマ より:

    PS3でUMDを認証してダウンロードできたら面白そうですね
    何か詳しい話は分からないのですが、ルートキーってのが漏れてもうどうしようもないそうなので
    簡単に突破してNGPでPSPゲーム遊び放題になりそうですw

    チョニー的には割れブーストでスタートダッシュが出来て万々歳かも!?笑

  10. まもすけ より:

    @regimeさん

    中古ゲーム販売業界がパブリッシャーサイドには嫌われ者だというのは分かっていますが、そもそもゲーム機本体が売れないことには新製品向けにいくらゲームを開発してもコスト回収できません。旧型のゲームがプレイできるというのは新製品発売に当たっては営業的に必須条件です。

    不要になるのはその新製品が軌道にのった後の話で、コスト削減のために不要にする選択肢は必要ですが最初から下位互換(本文中には後方互換と書きましたが)の半分を捨てたソニーの営業部門の英断?が吉と出るのか凶と出るのかを興味深く見守りたいと思います。

  11. blodk より:

    コピーゲームの元凶はUMDというよりUSBのような気がします。

  12. まもすけ より:

    でもメモリースティックに直接吸い出してしまうのでコピーゲームとUSBはあまり直接的な関係は薄いのでは?

    ちなみに、セーブデータ改造などはメモリースティックにデータを入れているせいなので、NPGでセーブデータ保存場所をどういう対応してくるのか興味があります。

    NGP専用カードにのみ保存とか、クラウド化してソニーが管理するサーバー内にしか保存できないとか。とにかくデータを全部ユーザーに触らせないなどを考えているのかもしれません。

  13. blodk より:

    そういえばたしかにそうですね。

    セーブデータ保存場所は気になりますね。
    ソニーが管理するサーバー内にしか保存できないとなれば、セーブ・ロードするたびに通信・・・ってことになるんですかね?

    以前一時期あったps storeの異常の件を覚えているので、自分で管理できないというのは少々心配になります。

  14. DSP より:

    悲しいですが違法コピーはいろいろなハードにとって、今や切り離せない存在になりつつあります。
    昔は日陰者だったこの事も何故か時代の流れによって表舞台へときてしまった事が大変残念だと思います。

    プロテクトでガチガチに固めたとしても、人間が作ったプロテクトは人間に解除できないわけじゃないですからね。現に絶対割れないと思われていたPS3も割れてしまいましたし。
    この事はハッキング界にとっては大変喜ばしい事でもあり、健全に利用しているユーザーにとっては大変悲しい出来事でもあります。

    今後どういう動きをしてくるのか楽しみです。
    どれだけハッカー達に時間稼ぎをさせるのか、今後の課題はそれだと思います。

  15. まもすけ より:

    @DSPさん

    まあ、冷蔵庫でもハッカーがその気になったら多分温度管理を乗っ取るようなハックも出来ちゃうんでしょうから(誰もやらないと思うけど)、ゲーム機に限らず全ての製品がハッカーの手にかかるとイタチごっこしなきゃいけないところは人間が作る製品の限界だと思います。

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