VAIO Phoneの風当たりで考える Androidのブランドとは?
MVNOの業界では老舗と言える日本通信から、VAIO Phoneが発表になりました。b-mobileのSIMカードとのセットで販売されるSIMフリーAndroidスマートフォンですが、発表直後からネット上では非難の嵐でした。
ソニーから分社化され、VAIO株式会社として新たな道を歩みだしたソニーのPC部門、そのVAIOのブランド名を冠したVAIO Phoneは「VAIOらしさ」を前面に出した「VAIO」らしいスマートフォンとして市場から期待されていましたが、実際発表されたのは台湾のクアンタ・コンピュータが製造したと言われるVAIO Phoneという名のついた普通のAndroidスマートフォンで、同じくクアンタ・コンピュータが製造していると言われているパナソニックのELUGA U2とそっくり、なおかつELUGA U2の3万円程度の価格に対して5万円という高価格だったことが大炎上を引き起こしたと考えられます。
日本通信オリジナルブランドのスマートフォンだったら何の問題もなく市場に受け入れられたと思われるこのVAIO Phoneの登場は、Androidのブランド確立の難しさをあらためて明らかにした事件だと言えます。その「Androidのブランド」についてちょっと考えてみました。
台湾のクアンタ・コンピュータは最近では、Apple Watchの製造も行ったと言われている大手製造会社であり、決してノーブランドメーカーではありません。VAIO Phoneは同社が持っているベース端末をもとに開発、製造されたもので、見た目がそっくりと言うパナソニックが台湾で発売した「ELUGA U2」はおそらく同じベースモデルの派生製品だと思われます。製品として問題があるというものではないのは明らかです。
そもそもAndroidスマートフォンというのは、誤解を恐れずに断言すると製造メーカーが異なっているだけで中身は同じです。違いはディスプレイやCPU、メモリといったスペックと”ぬるぬるサクサク”が評価される操作性、プリインストールアプリケーションくらいです。Android端末のブランドとして確立されているものといえばGalaxyだったりXperiaだったりと、各メーカーがAndroidスマートフォン発売と同時に確立した新ブランドばかりです。
つまり、ブランドとして認知されているのは既存のブランドの流用ではなくAndroidスマートフォン専用として立ち上げた新ブランドばかりなのです。(AQUOS PhoneやREGZA Phoneなどは液晶テレビのブランドを冠してますが、そういったブランドは軒並み成功したとは言えないどころかAQUOSのシャープを除いて既にAndroid端末生産から撤退しております)
発売から時間をかけて「ブランド」になるよう育ててきたブランド名だけが市場に認められてブランド化しているのであり、そういった意味ではAndroid端末にブランド価値をつけるのはそもそも簡単なことではありません。
同じようなケースに、Windows PCがあります。Windows PCも基本的には製造・販売メーカーが異なるだけで中身は一緒です。ある意味Androidと同じ境遇だと言えます。
そんなWindows PC市場でブランドを確立してきたVAIOを日本通信が協業相手として選択したのはある意味理にかなっています。問題なのは長年かけてソニーが育ててきたVAIOというブランドを、ブランドイメージ無視してブランドイメージからかけ離れた製品に名前を付けてきたことであり、その1点で市場の大反発を招いたと言えるでしょう。
PCで長年培われたVAIOのブランドイメージって以下のようなものではないでしょうか
国産で安心
洗練されたデザイン
統一感のある高度なデザイン性
高性能で高価格
VAIOは誰もが知っている、高品質なブランドの一つになっていると言えます。
そんなVAIOブランドを冠したVAIO Phoneは
台湾製
見たことあるデザイン
パナソニックで売ってるやつと同じデザイン
高性能でないのに高価格
と、まるでブランドイメージの反対を地で行く中身です。
「きちんと使えれば何でもいい」という、ブランドに価値観を見出さない人には気にならない話かもしれませんが、今回のVAIO Phone事件は誰もが知っている国産PCの一流ブランドの一つとなっているVAIOブランドに安易に頼ったマーケティングで市場に踏み出してしまった日本通信にとって手痛い失態となってしまいました。
デザインとスペックが異なるだけのAndroid端末市場はFreetelやPandAのように、オリジナルブランドのスマートフォンとして市場に問うていき、時間をかけて後にブランドとして確立させるのが最も手堅い確実な手段です。VAIO PhoneもVAIOではなく新しいオリジナルブランドで発売していればもっと評価されたはずなだけに残念です。