6.35TN(HEN)とHalf Byte Loaderの共存関係

ノーマルPSPのカーネルにアクセスできる脆弱性を利用することで、本来は不可能なHomebrew起動などの機能を追加することができるHomebrew Enabler 6.20TN(HEN)をクリスマスまでにリリースすることを予告していたTotal_Noob氏が、先日リリースされたPSPの最新ファームウェア(という名のGolf Exploit対策ファームウェア)6.35にHENを対応させるべく、彼自身が発見していたVSH exploitを用いて6.35TN(HEN)をリリースするべく開発をしているようです。これはTotal_Noob氏のテスターをしているwololo氏が直接本人から聞いた話です。

6.35がリリースされた後、6.35に対応したHBLがリリースされる話は聞こえてきません。このタイミングでHENが6.35に対応となるとHENでHomebrewが起動できる以上6.35にHBLは不要であるように見えます。果たして本当にHBL for 6.35はリリースされないのでしょうか。

635_HEN

HENはいわゆるカスタムファームウェアの一種であり、6.35でHomebrew起動も可能なHENがリリースされた場合、Homebrew起動しかできないHBLの存在意義は希薄になります。そのため6.35HENリリース後にHBL for 6.35を公開することは無意味です。HENリリース直後にHEN対策ファームウェアが公開されることは想像に難くありませが、仮にHENリリース前の今HBL for 6.35が何らかのゲームを用いてリリースされた場合、タイミング的にHEN対策ファームウェア(6.40など)と同時にセーブデータが使えなくなるというファームウェアアップデートによるHBL対策も同時に施されることはほぼ間違いありません。

更にHENが6.35でリリースされた場合、HEN(Homebrew Enabler)の名が示す通り6.35のノーマルPSPでHomebrewを実行することが出来るようになります。Homebrew(自作アプリケーション)をターゲットとした場合HBL(Half Byte Loader: Usermode exploitを利用し、カーネルにアクセスこそ出来ないもののノーマルPSPでHomebrew起動を可能にするアプリケーション)と目的がかぶります。機能的には圧倒的にHENの方が多機能で、6.35にHENがあれば基本的にはHBLは不要です。

しかし、本当に不要でしょうか。

HENは殆ど存在しないと言われていたカーネルの脆弱性を見つけ出し利用したものです。ユーザーモードexploitと異なり発見されることが非常に稀な希少価値的存在です。5.03でのTIFF exploitを利用したDavee氏のChickHENからTotal_Noob氏のTNまでおよそ1年半間が空いていることからも希少性が分かります。

そのため、今回6.35TN(HEN)がリリースされた後暫くは、次の新たなHENが登場するまで長い年月が必要になる可能性が高そうです。

一方、HBLで利用するユーザーモードexploitは多数見つかっています。それは対策ファームウェアがリリースされても極論すれば次の日にはその新しいHBLがリリースできることを意味しています。もちろんHBLを別のゲームに対応させていくことをwololo氏自身「porting(移植)」という表現を用いていることからも分かる通り、簡単な話ではありません。更にHomebrew互換性はベースにしているゲームが持つ関数に左右されますし、更には誰でも入手可能なゲームであること(入手困難なほどレアなゲームは避けるべきです)がまず大前提です。新しいファームウェアがリリースされるたびに、それに対応するHBLをリリースするには事前に移植しておくことが必要になります。移植には確認・調整を含めると時間がかかるためその条件をクリアしたものの中で次にどのexploitを用いるかを事前に決めておくことが必要になります。

まだ完全な安定版とまでは言えないHBLですので、改良作業と共に移植作業を並行して行うことは決して容易ではありませんし、現在でもパタポン2US DEMOとみんなのゴルフ1/2(JP/US/EU)に対応させなければならない事情を抱えているため新しいファームウェアに対応させたいがそこまでの余裕がないというのが実情のようです。

そのため現時点ではファームウェアごとのHBLリリースは綿密なプラニングに基づいているとまでは言いきれません。

exploitが数多く見つかっていると言われているにもかかわらず、FW6.35がリリースされて1週間以上経過してもHBL for 6.35がリリースされない(あるいはリリース情報がない)理由です。そしてHENが6.35に対応するという情報。この2点だけの状況をとらえると、6.35のHBLはリリースされないかのように感じます。

現時点で確実に言えることは、HBLは開発陣が多くのユーザーが待ち望んでいるHBLを自らの意思に基づいてそれを待つユーザーのためにリリースしているものだということと、HEN開発には一切携わっていないということの2点です。

HBL開発陣としては6.35でHomebrewをユーザーに楽しんでもらうにはどうすればよいかを考える中で、HEN開発にノータッチであるためいつリリースされるのか、果たして本当にリリースされるのかすらすべてTotal_Noob氏次第となっているHENを当てすることに少なからず疑問を感じているはずです。

HBLはオープンソースとして開発が開始されてから常に進化を繰り返すことで安定してきています。しかし、PSPのファームウェアのバージョンが上がっていく以上、それについていかなければ最後には「そんな昔のファームウェアのままのPSPなど存在しない」という状況に陥り、ユーザーが離れて行ってしまいます。そのため、HBLがユーザーにとって重要な存在であり続けるには新しいファームウェアごとに対応する姿勢を自ら示すことが非常に重要です。他人のHENを当てにしている状況で待ちの姿勢でいることのメリットより、長い目で見れば自らの意思で対応する姿勢を示すことが重要なのではないかと私は考えています。

つまり、HENとHBLは全く別の物であり、機能が重複していたとしても互いに共存していくべき、ということです。

HENは必ず開発されたらリリースされるとは限りません。実際にGripshiftのexploitを利用した5.02HENやTeam TyphoonのHENは、もともとリリースするとは言っていませんが現時点でもリリースされていません。HENを待っていて良いのは提供される側のユーザーであって、提供する側の開発者サイドではない、ということでしょう。

新しいファームウェアがリリースされるたびにexploitが一つ消費されることは止むをえません。6.35でHENとHBLがリリースされた場合exploitが2つ同時に消費されます。そこが気になるところではありますが、皆さんはどうお考えでしょうか。

私も当初は一つのファームウェアで消費するのは1つのexploitであるべきと思っていましたが、今は同じファームウェアでHBLとHENが共存することはHBLの将来にとってプラスだと思っています。

6.35TN(HEN)とHalf Byte Loaderの共存関係” に対して18件のコメントがあります。

  1. *** より:

    なるほど勉強になりました
    自分も無駄にexploitを潰すことには反対ですが、PSP Hackも将来(PSP2の出現などにより)下火になりうるかもしれないので、頃合いを見計う事も重要ではないかと思います

    意味の分からない文章ですいませんm(_ _)m

  2. j416 より:

    コメントなし

  3. 異次元 より:

    本当にまもすけさんの記事勉強になります。
    お疲れ様です。

  4. まもすけ より:

    @***さん @異次元さん

    コメントありがとです。何だかんだ言ってもPSP2が出てしまえばPSPが下火になるのは止むを得ないのが辛いですね。

    @j416さん

    ニセモノさんですか。これがネットの怖いところです。

  5. gggop5 より:

    逆にPSP2が出てPSPのアップデートが行われなくなれば
    HBLやHENをじっくり開発出来るのに、、、
    ともちょっと思ってしまいますね・・・

  6. ドカンくん より:

    取り敢えず、6.35までHENが使えるようになれば万一今のPSPがぶっ壊れても割と容易にHEN対応PSPを買い直す事が出来ますね。(金銭的な問題は別として…)
    今後アップデートで対応バージョンの新品が出回らなくなっても中古屋とかには沢山置かれているでしょうし。現状では壊れたら5.03の中古探すために何軒もハシゴしなければならないので大変ですからね。

  7. まもすけ より:

    @gggop5さん
    アップデートが行われなくなる頃にはハッカーはターゲットにすることすらしなくなるので(使いたいと思うユーザーも減るし)、その頃には終息です。

    @ドカンくんさん
    今のうちに複数台購入しておけば暫く安泰ですね。といってもPlayStation PhoneやらPSP2やらがすぐ出てきますけど。
    PlayStation PhoneがAndroidベースなら別分野のハッカーが参戦してくるかもしれません。

  8. エヌ より:

    6.35HENはVSH exploitを利用してXMBから直接起動できるみたいですね

  9. まもすけ より:

    @エヌさん

    そうですよ。6.20だったら安定して起動できていたようですが、6.35でどうなるかは開発次第かな?

  10. Winer より:

    6.20TN HENでは自作ソフトをほとんど起動できると書いてありましたが、
    PSPtubeは起動するのですか??
    無知ですみません。

  11. まもすけ より:

    @Winerさん

    特定のHomebrewが起動するかに関しては、全てのHomerewに同じことが言えますが、さすがにリリースされていない以上作者本人にしか分かりません。

  12. qwertyu より:

    Winerさん

    PSPtubeの後継版 go tubeなら、デモ動画4の一番最後で起動しています。途中までしか映っていませんが、全く起動しないということは無いようです。

  13. falsnet より:

    http://blog.livedoor.jp/psp_sdk/archives/51596082.html
    ↑のサイトでHENを制作中でクリスマスに配信すると言っているのですが、このサイトのHENは釣りでしょうか?
    性能では6.35TN-HENより上とも書いてます
    自分ではよく分かりません

  14. winer より:

    ご親切に。ありがとうございます。
    もう一ついいですか?本当にすみません。
    実際、PSP−3000とPSP Goではどちらの方が安定度が高いのでしょうか?
    あるサイトのコメントには
    [Goの方が安定してるらしいよ。]
    とありましたんで…

  15. まもすけ より:

    @falsnetさん
    かまってちゃんは放置しましょう。出す出す詐欺は日本の恥です。

    @winerさん
    どちらが安定かはテスターじゃないので分かりませんが、Total_Noob氏の聞くところによる性格と今までの経緯からPSP goを重視しているのは間違いないです。

  16. winer より:

    新たなPSP Savedata Exploitがでてきましたが、やっぱりデメリットしかありませんか??

  17. まもすけ より:

    @winerさん

    Sukkiri exploitのことですね。
    これはデメリットというか、敢えてリリース待ちしていたのをくだらない理由で公にされてしまっただけです。
    HENと同時に対策される可能性大です。
    HEN対策ファームウェアは年内にも出てくるでしょう。
    6.35でHENがあるのにわざわざHBL使う人がいないので結果的にはデメリットしかありません。

  18. Winer より:

    ここまで書いてくださるなんて!
    ご丁寧に教えてくださってありがとうございます。
    すごく理解できました。

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