ニンテンドー3DS ダウンロード版タイトルも発売へ 但し価格的メリットなし
任天堂がニンテンドー3DSカードソフトのダウンロード版の販売を7月28日(土)午前9時より開始すると発表していました。遂に任天堂がキラータイトルのダウンロード販売に踏み切った英断ではありますが、ユーザーから見ると決して良い戦略には見えません。販売価格が3DSカード版と同一だからです。
今回発表されたのはカードで普通に発売されると思われていた以下の2タイトルです。
- ●『New スーパーマリオブラザーズ 2』
メーカー希望小売価格: 4,800円
●『東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング』
メーカー希望小売価格: 3,800円
ポイントはメーカー希望小売価格。一般的にはダウンロード版は小売店で販売されるものよりも価格を安くすることが可能です。ダウンロード販売はいわゆる直販であるため、流通コストを削除できるから安くできると考えるのが消費者的感覚です。ソニーもダウンロード版はUMD版より若干安くなっています。
ところが任天堂はカード版もダウンロード版も価格を同一にしてきました。
物理メディアでのゲームを購入した場合、ゲームに飽きてプレイしなくなった後買取に出すことで初期投資の一部を回収することができます。実質的な値引きと考えてプレイし終わったらさっさと売却する人もいるでしょう。
ところがダウンロード版ソフトは買取してもらうことができません。DRMの問題もあるため他人に貸すこともできません。
そうなると普通はそれでもダウンロード版が安い位の価格差がない限りダウンロード版ではなく物理メディア版(3DSの場合はカード)を買うのが普通だと思っていました。ダウンロード版は価格的メリットがないと誰も買わないためカード版より安くするのが常識だ、と。
更に小売店では一般的にメーカー希望小売価格そのままで販売されることはなく、殆どの場合値引きがあります。ダウンロード版はメーカー希望小売価格で一律に販売されるため現時点ではダウンロード版の方が高いという逆転現象が発売日から発生する可能性が非常に高いです。
私が消費者として一般的な感覚ではないのかもしれませんが、カード版とダウンロード版が同一価格、と聞くと自分の耳を疑います。
その私の疑問について、任天堂は以下のように説明しています。
ダウンロード版ソフトは、ニンテンドー3DS本体に挿入されたSDメモリーカードに保存することができるため、複数の遊びたいソフトを同時に持ち歩いたり、入れ替える手間がありません。
要するにかつてあったようなバックアップを入れておけば沢山のゲームを持ち歩くことができ、カードの入れ替えをしなくて済むというFlashcartライクなメリットがありますよ、便利でしょう、と言っているわけです。
将来的に任天堂は既存の小売店を活用する(というより長年支えてくれた業界に礼を尽くす)形でコード販売によるダウンロード版の販売を主力にしようと考えているのかもしれませんが、それは在庫を持たなくて済む小売店には大きなメリットがあるもののゲームの中古販売が主流の小売店には大打撃ですし、何より既存の流通経路を残したままダウンロード販売のメリットを捨てるわけですからユーザーには何のメリットもないと私は考えます。
バーチャルコンソールではソニーに見習って欲しい価格設定をする一方でこういった価格戦略をすることにどんな戦略があるのでしょうか。少なくとも私には見えてきません。アマゾンで買えば4,800円と3,800円のものがこんな値段ですよ。
[追記]
コメントで名無しさんから情報をいただきました。セブンイレブンで「New スーパーマリオブラザーズ2 ダウンロードカード」(販売価格4,480円)と「ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング ダウンロードカード」(販売価格3,580円)と値引きしてダウンロード番号が書かれたダウンロードカードを販売するそうです。小売店ではダウンロード版も値引きがあるということは、コンビニなどを活用した販売経路と客層の拡大を狙っているようです。
eショップから直接買う場合は定価だけど、
販売店でコードが書かれたカードを買う場合は
小売が価格を設定できるらしいですよ。
セブンイレブン、任天堂の3DS用ダウンロードカードを店舗で販売 業界初
http://www.zaikei.co.jp/article/20120720/108818.html
>今回販売するのは、「New スーパーマリオブラザーズ2 ダウンロードカード」(販売価格4,480円)と
>「ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング ダウンロードカード」(販売価格3,580円)の2種類。
つかソニーハードの場合も、DL版は定価より安いものの、
Amazonなどでパッケ版を買った方が安い事が多いような。
ソニーの場合「若干安く」と書いたのは本当に若干だからです。店舗によって違いますが、パッケージ版の方が私も安いことが多い印象です。
ソニーは本気でダウンロード版売ろうとは思っていないんだろうと思います。
任天堂がeShopで定価売りしたり、ソニーが微妙にしか安くしないのは、小売店への配慮ではないでしょうか。
ダウンロードカードは、DL版の利便性を持ちつつ、小売店への配慮ができ、価格競争にもかけられる、DL版の新しい販売形式への挑戦でしょう。
中古販売や、貸し借り不能などの部分は残りますが、面白い案だと思います。
中古というものが残る限り、ダウンロード版は価格的メリットがあるべきだと思います。すべてダウンロード販売のみに移行できればそれはそれで回線さえ繋がっていればいつでもどこでも買えるというメリットも大きいでしょう。
スマートフォンではそれを既に実現していますが、任天堂は流通を残したままそこに移行しようとしているので上手くいくのか心配です。実店舗で商品を購入する安心感はありますけどね。
流石にこの高い値段では
小売店への配慮の前に客への配慮を考えてくれという話になるような・・・